71 posts categorized "舞台・ステージ"

2008.05.10

ビクター落語会(4月19日)

 この日のビクター落語会は,柳家さん喬,柳亭左龍の親子会。左龍がマクラで話していたが,親子会は初めてなんだそうだ。「今回が最初で最後かもしれませんよ〜」と言っていたが(笑) このビクター落語会は,落語協会所属で,かつ古典落語の実力者を揃えるようにしているらしいのだが,左龍はいいと思いますね(さん喬は既にレギュラー化している)。二つ目時代(「小太郎」だった頃)にも1回見たが,その時も上手いと思った。真打になってからはますます噺も体格も風格が出てきて何よりである。

 最初は前座。小ぞうの「金明竹」。先月は市朗で聞いたが,小ぞうの方がしっかりしているかも。
 左龍の「ふだんの袴」。これ,前に鈴本で市馬で聞いた。左龍のいいところは,どこか芝居っぽさがあるところだ。もしかすると歌舞伎が好きなのかな。登場人物を描く時に,写真やビデオのように表現するんじゃなくって,少しデフォルメする。というのはどの落語家もやっているが,そのデフォルメの仕方が歌舞伎っぽい感じがする。あと,市馬の時は「調子に乗ったバカ」に焦点を当てていたが,左龍だと「調子に乗ったバカを見て困惑する人達」に焦点を当てることで,お調子者のバカさを表現していたようにみえた。
 師匠のさん喬は,おせつ徳三郎の「花見小僧」。休憩を挟んで「刀屋」。さん喬は,映画というかリアルな演劇というか。天然ボケ気味の主人がいい。あと,ちょっとしたところでホロリとさせるのも上手い。後半の「刀屋」は,少し最初が重かったか。頭に血が上った若者に対して,刀屋が「昔ながらの忠義」を説くというのは今の時代にどれだけ通じるのか。
 で,ここまでで会場はかなりお腹いっぱいになってしまった。さん喬にじっくりたっぷり語られてしまったから(笑)
 トリに出てきた左龍は「もういいって感じですね」と自分でも言っていた。「前があまりたっぷりやるとやりにくい」とも。しかし,こんな雰囲気で始まっても,左龍にはじわじわと客を集中させる力があった。噺は「淀五郎」。
 マクラは,さん喬ネタ。師匠は踊りが好きで,昔国立劇場の舞台に立って「藤娘」を踊ったことがあるとか(笑) この一門は喬太郎もそうだけど,師匠ネタ好きだよね。
 「淀五郎」だが,最初に登場人物と当時の歌舞伎がどういう興行をしていたかを簡単に説明してから始めた。師匠との親子会でこの噺を持ってきたところに,左龍の並々ならぬ決意が感じられる。自分を取り立ててくれた人から,心無い(ようにみえる)仕打ちを受ける。一体何がダメなのか。懇意にしていた他の人物からの言葉で,自分に欠けていたものや自分の慢心に気付く。最初はちょっと疲れた感じだった会場も,みるみるうちに噺の世界に引き込まれていく。左龍,恐るべし。今後もビクター落語会で定期的に呼んで欲しい。

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2008.04.11

ビクター落語会(3月28日)

 三田の仏教伝道会館で行なわれているビクター落語会。この会のコンセプトは,ビクターだからか,映像作品として古典落語を収録することらしい。ビクター落語会のDVDをいくつか購入したのだが,師匠方の気合が伝わるようで面白い。ただ,この仏教伝道会館が分かりにくくて困る。全く目印がない地域なので。
 今回は,古今亭菊之丞と柳亭市馬の二人会。菊之丞は,前から生で見たかったのだ。あと,両者ともに古典落語を中心にしているが,芸風は違う。菊之丞は華やかできれいで色気のある芸風で,市馬は逆に男らしいカラッとした芸風。
 開口一番は,前座の市朗の「金明竹」。よく覚えましたなあ(笑) 次は市馬の「のめる」。これはインターネットで配信されていたのではないか? こういうバカバカしい噺は本当に面白い。
 菊之丞の「三味線栗毛」。菊之丞はテレビで落語をするときは少し声を変えていると思う。実際の高座は,意外とオッサンくさい声である(笑) しかし,本当に華があるなあ! この日の「三味線栗毛」だが,最後は錦着は酒井雅楽頭に会え,検校にしてもらえるという筋だった。錦着は少し年配で,あまり世の中に対して多く期待していないような存在という風な造形だった。涙の人情噺になりそうでならないようにしてしまうのが,この人の持ち味か。
 仲入り後は,菊之丞の「紙入れ」。マクラは「寝取られ小咄」だったか? こういう噺は本当に上手いなあ〜。そして,何がすごいって,人物によって全く顔つきが違うところ。女性が特にうまい。
 最後は市馬の「三軒長屋」。こういう荒っぽい男がたくさん出てくる噺がよく似合う。長講一席,演者の足がしびれるほどの大熱演。大満足の2時間半,この会すごくないか?

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2008.03.30

桂歌丸独演会(3月22日)

[] 3月の国立演芸場特別企画は桂歌丸独演会。実は国立では初めてだそうだ。旭日小綬章受章記念ということだが,当然のごとくチケットは売り切れたので,来年以降も期待出来る。

 この日の端は柳家小蝠の「天狗裁き」。最初にこの噺はちょっと辛かったか。会場がある程度盛り上がったところで出すような噺だから。本人も「前座があると思ったのでこの噺にしてしまった」と言っていたし。あと,少し太り過ぎではないか。足が辛そうだが。
 次は笑福亭鶴光(!!)の「植木屋娘」。鶴光は芸協にも所属しているから。この日は芸協の会長の独演会なので「乳頭の色は?」とかそういうのは全くなく(当たり前だ),上方落語を普通にやっていた。噺が「植木屋娘」なのは,次が「小言幸兵衛」だからかな。鶴光らしく少しエロ風味があって,非常に面白かった。会場も盛り上がったし。有名なトリビアだけど,「鶴光」の読みは「つるこう」ではなく「つるこ」です。でも変換ソフトでは「つるこう」でないと変換してくれません。
 歌丸師匠の「小言幸兵衛」。この噺は先月遊雀で聞いたが,やっぱり歌さんの方が上か。会場の雰囲気も良かったし。歌さんの幸兵衛は,「自分でも小言はしょーもない癖だとうすうす分かっている」という感じがする。普段から幸兵衛に接している人達も「まーた言ってるよ」で済ませているんだろう,というのが何となく想像出来るんですよね。あと,芝居好きなところも歌舞伎好きな歌丸師匠らしい。

 仲入り後は紙切りの今丸師匠。この人は洒落っ気があっていい。また見たい。
 トリは歌丸師匠の「竹の水仙」。相変わらずおかみさんは富士子さんだそうだ(笑) マクラは甚五郎という人がどういう人でどういう経緯があって旅に出ているのかという説明。この説明のお蔭で,「竹の水仙」がどういうものかが分かり,話の展開も明確になったと思う。甚五郎がまだ若くて,ボンヤリした無意味に偉そうな人にしか見えないというのも良かった。

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2008.03.01

悠々ゆうじゃく 其の三(2月17日)

[] 遊雀師匠の独演会があるというので行ってきた。会場は内幸町ホールという,オフィス街のど真ん中にあるホールで,休日になると本当に誰もいない。あまりに通りに誰もいないから,日時を間違えたのではないかと不安になったくらいだ。
 中に入ると,さすがに人はいた。遊雀師の独演会に来るようなお客なので,マニア度高し。落語家追っかけっぽい人とか,抑制がきいてない人とか。会場はそこそこの入りか。やっぱり日曜にこの場所というのがきつかったか。
 最初はマグナム小林のバイオリン漫談(笑)初めて見ましたが,昔はバイオリン漫談の人ってそこそこいたそうですが。この日のネタでは「暴れん坊将軍」が面白かったかな(笑) ちなみに私は「パイノパイノパイ」はドリフで覚えました。
 次は遊雀師の「小言幸兵衛」。マクラでもあったけど,落語の中の世界では,喧嘩の時に言葉が飛び道具になることはたくさんあるんだけど,それで本当に致命的になることは絶対にない。例えば,「てめえ殺すぞ」と言ったところで本当に刃物でブスッとかやることはない。みんなそうやって言いあった後になって,「あの時お前はこう言っただろう」と蒸し返すのは野暮だし,ましてや「訴える」なんてのは大人げない。
 しかし,今はそういう時代ではない。言葉が本当になるから。あるいはこちらは言葉を本当にするつもりではなくても相手がそう取るから。そういうゲンダイにおいては,この話はやりにくかろうと思う。だって,幸兵衛は今の時代だと完全に「ハラスメントオヤジ」となるだろうから。小言のつもりが6文字の片仮名になっちまうんですよ。遊雀師らしく,幸兵衛にキレる男が良かったな(笑) この話は歌丸師匠でも聞く予定なので,それと比べるのが楽しみ。

 ゲストは桂南なん師匠。何といっていいか分からない雰囲気(笑) 
 
 最後は「ねずみ」。旅の噺だからマクラは当然乗り物の話(笑) 羽田からの飛行機はぜひ右側に乗れ,だそうです(笑) なんといっても卯之吉がいい。理不尽な苦労をして必死だけど,まだ子供らしい,憎めない子供という感じ。それを見つめる甚五郎の目線もとても優しい。こういう噺の方が遊雀師には合っているかな。次の回も行きたかったが,その日はさん喬・左龍の会と重なっていて残念。

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2008.02.09

国立能楽堂定例公演(1月18日)

 もうだいぶ前のことになってしまったが,備忘録として感想をあげておく。

 最初は,狂言「磁石」。シテ(すっぱ)が千五郎,アド(見附の者)があきら,アド(宿の亭主)が宗彦。最初,あきらさんは明らかに台詞を何度かとちっていた。最初の台詞が長くて,似たような場面を何度も繰り返すからか。シテとの掛け合いになってからは,持ち味を発揮してはじけていたが(笑) 千五郎さんは顔つきがお父さんそっくりになってきましたね。ただ,真面目な方なんだろうなあ,キャラが少し弱く感じられる時がある。父上のように年を取る事にはじけて欲しい。そして,テレビで人気のもっぴー。相変わらず狂言は上手くなってない(笑) ただ,もっぴーをテレビドラマや狂言以外の舞台で見ると,本当にいい演技をするし,感心させられることが多い。狂言って本当に難しいのだなと思う。それにしてもおじさん達と共演させてくれる茂山さんも懐が深いというか。


 後半は能「梅枝」。シテは梅若六郎。これからますます舞台が充実してくるんじゃないですかね。この日は小書「越天楽」による上演で,太鼓が入った。その太鼓が金春惣右衛門! まだまだ元気でございます。アイは正邦。このくらいの年代がどんどんアイを勤めるようになっているんですな。

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2008.02.05

壽 初春大歌舞伎(1月14日夜の部)

[]  和泉元彌騒動のせいで(笑)すごく遅くなりましたが,感想あげておきます。いかにもお正月らしい,華やかで頭を使わない(笑)ものばかり並んでおります。

 最初は,「鶴寿千歳」。元々は昭和天皇の御大礼記念に作られたそうです。前半の松が歌昇,竹が錦之助,梅が孝太郎。歌昇の安定感は相変わらず。力強さと独特の柔らかみのある舞踊です。錦之助とは対照的。孝太郎はこういうところに収まる人になって何よりです(褒め言葉よ)。後半は姥が芝翫,尉が富十郎。トミーの手が震えてるのは舞踊なのか地なのかもはや分かりません(笑) 逆に芝翫はしっかりしすぎてる感じ。まあ,現実の世の中もおばあさんの方が元気ですから……。

 次は,幸四郎と染五郎の「連獅子」。染五郎がいまだに仔獅子というのもどうなのだろう。そして幸四郎は最後まで持つのだろうか。もうそろそろこの親子の共演も見られなくなるかもしれない。
 まず何がすごいって前ジテの幸四郎の顔つき(笑) 舞踊なのにドラマ性を打ち出しているのが幸四郎。染五郎が「舞踊性」を打ち出しているのと全く違う。なので前ジテは幸四郎が圧倒し,後ジテは染五郎の身体能力の高さが印象に残った。さすがに後ジテは幸四郎には辛かったか。間狂言は高麗蔵と松江。まあ,あの宗論はつなぎだから。
 
 最後は「助六由縁江戸桜」。團十郎でございます。個人的には初役で福助が揚巻を演じるのに期待していた。なぜ今まで揚巻を演じなかったのか不思議だと思う。菊之助だってやってるのに。揚巻のような化け物を自然と演じられるのは,化け物性を持っている福助しかいないのに。
 そして,福助は結構ハマっていた。出のところで少しやり過ぎの感じもしたが,意休に毒づいた直後に流し目をくれるなんてそういう訳の分からない感じがいい。あちこちでチヤホヤされているけど,どこか不自由さがあって,そんな中プライドだけは高く持って,みたいな役に妙にハマるのが福助。
 良かったのは梅玉さんの新兵衛。こちらも初役。菊五郎だと助六と一緒に面白がっている感じがするが,梅玉さんだと意味が全く分からないで弟の真似をしている感じがする。あと,通人は東蔵さん。松助が亡くなって,もうこの人しかいないのか……。
 あ,團十郎のことを全く書いてなかった。還暦の助六は史上初だそうだ。で,若い者が演じる助六に比べるとちょっと息切れしているが,それでも團十郎だからいいかと思わせるところがすごい。そして,意休は左團次。この人の意休はどんどん良くなっていると思う。粋なところが出てきたように見える。

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2008.01.12

新春国立名人会(1月5日)

 3日に続いて国立演芸場へ。最初は松本源之助社中の獅子舞。前エントリにも感想を書いたが,民俗芸能っぽい感じ。大黒様,おかめとひょっとこの両面踊りというのはお約束なのかな。
 最初は昇太の「力士の春」。実は3日のお昼のNHKの寄席中継でも同じネタを披露していた。マクラは「嫁が欲しい」というのまで一緒。それにしても,子供が力士英才教育を受けているという設定が面白い。
 柳家紫文。俗曲界のなぎら健壱ってことでいいの?(笑) 
 林家正雀の「豊竹屋」。この日一番印象に残った話。義太夫で風呂が熱いのうなぎが食べたいの唸る豊竹屋と三味線の掛け合いが面白い。その後は寄席の踊りも披露されていた。昔風のいい噺家だと思った。
 神田松鯉「門松の由来」。神田先生は古めかしい風貌と声の講談師。とにかく口跡が良い。
 仲入り前は三遊亭遊三の「ぱぴぷ」。小遊三の師匠。ぐだぐだ(笑)
 仲入り後は国本武春の「巌流島」。彼がどう評価されているのかよく分からないし,なんかちょっとついていけないなと思うところもあるのだけど,多分,浪曲というのは古くて,もう現代人には伝わらないものでは決してなくて,ブルースやフォークやロックのように,人間の普遍的な感情を歌い上げるものだということを彼は伝えたいのだと思う。演歌だって日本のソウルだからな。
 雷門助六は「仕立ておろし」。噺はグダグダだった。芸協は大丈夫かとちょっと不安になる。が,寄席の踊りの「あやつり踊り」は本当に素晴らしかった! この日のトリは歌丸師匠なので,「いかにも新春の寄席らしく」ということなのかな。3日とは大違いだ(笑)
 トリの前は松旭斎すみえ。昔から笑点で何度か見ているが,不思議なことにあまり印象が変わっていない。そりゃ昔よりは年取ってて,昔ほど大掛かりな手品はしなかったけど,話芸とネタのコンビネーションは相変わらずでした。
 トリは歌丸師匠の「火焔太鼓」。やっぱり歌丸師匠なので,道具屋はかなりの恐妻家(笑) そしておかみさんの言葉の端々には何とも言えない棘が漂っている。ちょとした台詞の中にも,「あんたどうせまた失敗するんでしょ」という空気がありありと伝わってくる。だから,太鼓が売れた金をおかみさんに見せる時の道具屋の得意満面でかつ壮快な表情といったらすごいのだ。ちなみに道具屋のおかみさんの名前は富士子だそうだ(笑) 歌丸師匠は素晴らしいや。

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新春国立名人会(1月3日第2部)

 新春から「みつを」物件が相次いで発見され,年始から(私だけが)落ち着かない状態が続いている。そして宗家も新たな動きを見せているようだが,ここらで国立名人会の感想を書いておく。書いておかないと私が忘れるからである。

 最初は若山胤雄社中の獅子舞から。良くも悪くも「舞台で見せるための獅子舞」という感じだった。5日の松本源之助社中が,行事としての獅子舞だった(客席を回っておひねりをくれる人の頭を噛んだりしていた)からかもしれないが,アクロバティックな動きとか多かったように見えた。
 桂平治「女中の文」。時間が限られているので,全体的に噺は短い。マクラは文治師匠の思い出とか新春の寄席の話だったかな。国立演芸場って確かに周りに何もないな。最高裁の隣だし(笑) 
 東京ボーイズ。昨年,旭五郎が亡くなったが,まだまだ二人で元気に活躍されている。元日にTOKIOと共演しているのを見たが,あのベタな芸は寄席では面白いのだ。「千昌夫になって」から始まって,最後はお約束の「謎かけ問答」。
 桂文楽「替り目」。ペヤング文楽あるいは小益文楽。「小益」だったら,本当に何も問題ないのにな……なんてったって昭和の名人といえば「文楽」だからな。
 アサダ二世。胡散臭くて良かった(笑)
 仲入り前は橘家円蔵の「反対俥」。あちこちの寄席を掛け持ちしているせいか,最初声があまり出てない感じがしたが,それでもやっぱりこういうバカバカしい話はとても上手い。先月の彦いちは一生懸命やってもいまいちだったが,円蔵師匠クラスになると7分の力で客席を沸かせられる。
 
 仲入り後は一龍斎貞水。荒木又右衛門の話だった……はず(すみません,話の名前忘れました)。時々いいところで冗談入れてしまって冷めてしまうところがあるのだが,先生は華があるね。講談も今後聴きに行こうとか思ったりして。
 三遊亭円窓「枯れ木や」。円窓師匠は,落ち着いた話しぶり。ある意味この日浮いていた。なんだか学校の教頭先生のようだった。
 トリの前は大瀬ゆめじ・うたじ。ゆめじがうまいこと言ってるのをうたじが理解出来ないといういつものネタやってた。
 トリは,鈴々舎馬風!! 一応,落語協会会長! 20分も持ち時間あるぞ,どうする!? 最初の10分は「男の井戸端会議」だったが,最後は歌謡ショー。舞台で踊るは派手な着物を着た弟子の馬るこ。歌は2曲もあって,フルコーラスで歌うから長いし。予想されたこととは言え,無茶苦茶だった。まあ,お年始だからいいか。

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2007.12.26

円丈の「らくだ」をやる会(12月23日国立演芸場)

[ ][][] 今年最後の寄席は,円丈&SWA(小ゑんさんもいますが)の会へ。毎年年末に行われている会らしいが,今年初めて行ってみた。
 最初は全員の挨拶から。円丈師匠を盛り上げようということだろう。いつも円丈を生で観て思うのは,意外にも(?)ものすごく繊細なことだ。客の反応が悪いと無茶してしまうところがある。特に「らくだ」というのは,円丈師匠もおっしゃっていたがとても長くて難しい。馬鹿馬鹿しいとも違うし,泣かせるところも全くない。ブラックなんだけど,後味が悪いのもいけない。
 最初は彦いちの「反対俥」。後に喬太郎とか小ゑんとか昇太とか白鳥とか控えているのでやりにくかったらしい。最初のうちは客の入りもいまいちというのもあってか,頑張ってやっていたがやや空回り気味だった。頭をぶつけたのは大丈夫だろうか。
 次は喬太郎。「擬宝珠」で来ましたよ。ウルトラマンから「演芸ガチャガチャ」(あったら欲しい!),そしてギザ10というマクラ。古い噺らしいが,オリジナルっぽく聴こえる。
 小ゑんは名作「鉄の男」!! 小ゑん師はおそらく自分は鉄ヲタではないと思う。自分が鉄だったら,多分ネタにはしないと思うのだ。しかし,ヲタクマインドがある方だとお見受けした。「キハ58系」はともかく,「レイルウェイライター種村直樹」はマニアックすぎて誰だか分かった人は殆どいなかったと思われる。ちなみに,私はなぜか知っている。そして,会の性質上か,いい意味で力が抜けていて良かったな。最初から「誰もついていけない噺します」だし。
 中入り前の最後は昇太の「お見立て」。この人やっぱり腹黒いよね(笑) しかし,20分の持ち時間を生かした噺はさすがだと思った。テレビでもいつも思うが,時間配分がうまい。客が弛れないようにするのもうまい。
 中入り後は,白鳥の「ナースコール」。円丈の一番弟子(※欄で指摘がありましたが,総領弟子はらん丈師匠でした。訂正いたします。ご指摘ありがとうございました)だからこの順番なのだろうが,ちょっと期待外れ。緊張していたのかもしれないし,前があれだけ盛り上がっちゃうとね。

 大トリは円丈師匠の「らくだ」。最初は緊張気味で,らくだの兄貴分の半次がやや単調に見えた。しかし,久六が酔っぱらってからはいい感じになってきた。この噺の最大の見せ場だが,人間関係が完全に入れ替わるのが面白かった。オチは……書かない方がいいかな(笑) 今後3年くらいは古典をやると仰っているので,今後も楽しみではあるが,体力落ちてそうなのが気掛かり。

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2007.12.16

野村又三郎師死去

 橋下弁護士に「変質者」呼ばわりされようと,能楽愛好家のハシクレなので,この記事をエントリとして上げておく。
 先日,国立能楽堂のページで予定されていた舞台を病気のため休演するというお知らせが載っていた。もう年齢も年齢だからと心配していたが,このようなことになってしまった。この10年近く,和泉流の問題で,しなくてもいい苦労をされてきたことであろう。心よりお悔やみ申し上げます。

狂言界の重鎮、野村又三郎さんが死去(YOMIURI ONLINE)

狂言和泉流・野村又三郎家当主で、狂言界の最長老の一人として活躍した十二世野村又三郎(のむら・またさぶろう、本名・信廣=のぶひろ)さんが12日午後1時3分、脳しゅようのため亡くなった。
 86歳だった。
 告別式は15日午前11時から名古屋市千種区千種2の19の1いちやなぎ中央斎場で。喪主は長男、小三郎(本名・信行)氏。
 又三郎家は和泉流三派のひとつ。江戸時代には尾張藩に仕えた由緒ある家系。十二世は十一世信英の三男として東京に生まれ、4歳で初舞台。戦時中に徴兵され、シベリア抑留を経て1959年、先祖ゆかりの名古屋に本拠を構えた。

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2007.12.09

志の輔らくごのごらく(11月23日・国立演芸場)

[][] 毎年チケット争奪戦が行なわれる「らくごのごらく」。今年は何とか,本当に何とかチケットが取れたので(最後のチケットですと国立の人に言われた),念願かなって見に行く事にした。何しろ,志らくも登場という豪華版だし,パルコの正月公演は場所的にしんどいので(渋谷の真ん中に辿り着くまでに疲れてしまう),志の輔を拝むのにはありがたい。
 演目は以下のとおり。意外なことに古典しかやってないし,前半の志らくもトリの志の輔も大きな話を持ってきた。

立川志の春 「狸の札」
立川志らら 「宮戸川」
立川志らく 「火焔太鼓」
だめじゃん小出のジャグリング
立川志の輔 「井戸の茶碗」

 最初の志の春は志の輔のお弟子の前座。明るくてよろしい。次の志ららは,志らくの弟子の二つ目にして,高田文夫の運転手らしい(笑) 真打になったら,マネージャーに格上げじゃないですかね(笑) 「宮戸川」自体がバカバカしい話だが,本人自体もはじけててバカバカしい。二つ目にしてはずいぶんと慣れてるもんだな。
 前半の最後は志らく。立川流をオ○ムに喩えるというのも,もう古いんじゃないですかね(笑) 志らく独特の妄想ワールドがすごい。おかみさん,なんか凄いんだ(笑) あと,わざと時代設定にあってないネタ入れたりとかね。ややドタバタした感じがしたが,やっぱりうまいな。

 後半はだめじゃん小出のジャグリング。初めて見たが,時々非常にくだらないことをするのが良い。あと,実は結構難しいことをやっているが,難しいという印象を与えないのもいい。
 最後は志の輔。最初は少し風邪気味かとも思ったが,徐々に調子が上がっていく。人物造形も見事だし,しっとりとした話しぶり。で,マクラのせいか少し風刺の要素もある。武家の意地に振り回される庶民の抗議。意地や面目のために人の心が見えなかったことに気がつく浪人。道具を通じて,今まで他人だった人達が少しずつ心を通い合わせて,最後はめでたしめでたしで終る。すごい落語家だね。「火焔太鼓」と「井戸の茶碗」,「汚くて全く価値がなさそうな古道具をお武家が目をつけての騒動」というところでつなげたのか。でも,切り口が全く違うところも面白い。

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2007.12.08

ファビオ・ルイジ指揮ドレスデン国立歌劇場「サロメ」(11月24日)

[][][] 個人的には今年最後のオペラがこれ。上演時間が短いので,プレトークがついていた。主にムスバッハの演出についての解説だが,どういう意味でこういう演出にしたかということが詳しく説明されていた。10月の「モーゼとアロン」もムスバッハの演出だったが,現代的な意味を持たせるとか,視覚的にあまり親切でないとかそういう特徴がある。苦手な人は苦手かも。
 で,今回の見所だが,あの「7つのヴェールの踊り」は完全に意味不明。踊ってるのはヘロディアスなどで,サロメは殆ど舞台に出てこない。その後で「見事な踊りだ!」と言われてもねえ(もともとあの部分は結構かったるいが)。
 ただ,サロメの造形はいいと思った。まだ16歳の少女が義父に性的な目で見られることや母親が性的なところで問題があることを激しく嫌悪しながらも,自分も性的な要素で人の心をもてあそんでいる。そんな中,自分を全く性的に見ない男,世の中から超越している男に対して憧れの心を持つようになる。その男に拒絶された少女は,男の首とともに世の中から離れていこうとする。そんな話になっていた。サロメを演じるカミッラ・ニールンドは,エロい感じのサロメではなく,思春期独特のエキセントリックさを感じさせるサロメだった。世の中に対する嫌悪や大人になることへの恐怖や超越したものへの憧れといった複雑な感情を持っているサロメだった。ヨカナーンは「預言者にしてはややメタボではないか」とも思ったが,歌は良かった。あとヘロディアスのガブリエレ・シュナウトは大人の女の狡猾さや妖しさが出ていて,サロメといい対比になっていた。
 そして,やはりドレスデンの演奏は素晴らしい。ルイジの指揮も。そういえば,ルイジもメルクルも何年か前までは普通にN響に来てたのになあ……。押さえとけば良かったのになあ。

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2007.12.05

ファビオ・ルイジ指揮ドレスデン国立歌劇場「ばらの騎士」(11月18日)

[][][] 今年の秋はなぜか方々で「ばらの騎士」が上演されてました。いろいろキャストなど見比べた挙句,結局これを観に行く事に決定。直前に指揮者がルイジに代わったり,更には,元帥夫人役に予定されていたアンゲラ・デノケが急病で来られなくなったりとハプニング続きでしたが,今年の秋のオペラで私が一番気に入ったのはこれです。初めて「ばらの騎士」を生で観たのだけど,この年齢になったから身にしみる内容ですね。会場を出る時に後ろにいた若いカップル(大学生くらいか)が「うーん」みたいなこと言ってたけど,20代前半には元帥夫人の気持ちはまだ分からんのだよ。元帥夫人と同い年くらいの年齢(といっても,当時の30代の方が今よりもずっと大人なんだけど)になれば,きっと分かってくるのだよ。

 代役のアンネ・シュヴァンネヴィルムスは気品が溢れていて非常に良かったです。一番素晴らしかったのは,オクタヴィアン役のアンケ・ヴォンドゥング。マーラーの「復活」で聴いた時にも素晴らしい歌手だと思ったけど,この日はそれ以上に良かった。特に第3幕で女装しているところが一番良かったな。今後要注目。森麻季はあんなものかと。声が独特。アンケ・ヴォンドゥングと並ぶと(余計)演技が単調に見えるのがちょっと。
 演出ですが,現代風で犬まで出てくるのはビックリ(どうも「出演犬」を募集していたらしい)。SM の女王とかボクサーには一体何の意味が? 現代風なので余計に性的に生々しい感じもしました。確かに「有閑マダムと若いツバメの愛と別れ」の話なんだけどさ。

 そして,ルイジの指揮も非常に良かったです。「復活」の時はちょっと「?」でしたが,R.シュトラウスが向いてるのかな。華やかで美しいけどどこか刹那的で物悲しい音楽にとても合ってる。2009年にドレスデンシュターツカペレはルイジとともに来日する予定なので,その時も勿論駆けつけようと思っております。

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2007.11.29

準メルクル指揮ドレスデン国立歌劇場「タンホイザー」(11月17日)

[][][] ドレスデンのオペラ第1弾。直前になって,「タンホイザー」の指揮者が「音楽的理由によって」当初予定されていたファビオ・ルイジから変更されたので話題になりました。私は準メルクルの回に行きました。ペーター・コンビチュニーの演出ということで,ついていけるかどうか不安になる。
 案の上,あまりついて行けなかった。悪趣味なのは相変わらず。最初の,人形のタンホイザーをいたぶったり,大きな人形のタンホイザーが明らかにキリストを狙ったものだったりするところで,ちょっとひく。第1幕から巡礼が現れてタンホイザーをあがめたりとか,キリストと重ねてるんだけど,後の幕を考えるとかなりの悪趣味。第1幕の舞台の上は赤と緑。ノルウェイの森?(笑) 生命の象徴なのかな。人間が黒で,エリーザベトが白の衣装なのも意味があるな。第1幕最後とか第2幕の歌合戦の前の子供っぽい演技も,人間社会に対するイヤミを感じた。また,第2幕の最後で,フラッシュのように人物を止めるというベタとかいろいろひっかかるところがある。
 そもそもタンホイザーの造形が子供っぽい。確かに,あれもしたいけどこれもしたい,いい気になって反逆してみたらみんなに反発されて,何とかしようと思ったら何ともならないから逃げよう,というのは「子供」なのだろう。ワーグナーのオペラに出てくるテノールはたいてい子供っぽい。しかし,ここまで子供っぽいと「バカ」に見えかねない。
 最後もなんだか意味が分からないまま終ってしまった。ヴェーヌスはタンホイザーとエリーザベトを抱きながら,生きていたのか死んでいたのか。


 とタラタラ書いてみたが,音楽自体は非常に良かった。準メルクルはややテンポが速いところがあるが,メリハリのある指揮をしていた。いい指揮者だと思った。N響の時はフツーだったが(笑) またオケの音が素晴らしいこと! これ聴いただけで良かったなと思った。タンホイザー役のロバート・ギャンビルは,前のバイエルンの時も出ていたが,少し声がこもっている感じがする。が,それが憂いがあるように聴こえたりする。前よりも格段に良いと思った。

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2007.11.01

国立能楽堂・狂言特別公演「特集・美しき老い」(10月25日)

[][][] 久しぶりの狂言。インディーズ狂言じゃなくてちゃんとした狂言でございます。今回の公演は人間国宝が2人も出るということで,渋い演目にも関わらず,満員御礼。

 最初は「腰祈」。シテの祖父は山本東次郎,山伏は山本則俊,太郎冠者は山本則直という3兄弟揃い踏み。もう東次郎さんも70なのか……。則俊師のテンションの高さは相変わらずで,則直師の落ち着きと対比をなしてました。そしてやっぱり味わいがあるのは東次郎師。「剛直」と言われる山本家ですが,独特の柔らかみと軽みがあります。次の人間国宝はこの人になって欲しい。「腰祈」自体は,相変わらずシュールな話だよなあ。シャギリ留めで終るし。

 次は「居杭」。人間国宝にして,先日文化勲章を受章した千作師が居杭。老人の居杭は珍しい。やたらと頭をたたかれる役なので,常の老人だと痛々しい感じを与えるからだろうか。しかし,この日の居杭は千作師だし,翌日は千之丞師なので,どう考えても「ただでは済まない」からいいのか。もう,ホントに,舞台に座っているだけで面白い(笑) そういう境地に達しております。御歳87だが(今年で米寿!),まだ大丈夫だと思う。何某は七五三,算置は千五郎。七五三師は相変わらず濃いなあー。この兄弟の掛け合いは,前々から弟の方が強そうに見える。ちなみに,前に茂山家で観た時も,何某と算置は同じ役者で(当時は七五三ではなく本名の眞吾),居杭はまだまだ子供だった逸平ちゃんでございました。

 素囃子の「楽」を挟んで,「比丘貞」。シテは万作さんです。面白い狂言じゃないんですが,芸術的で品が求められる狂言には合っているなあ。いい舞台でしたよ。親は石田幸雄で子は吉村康眞君。この子役はどういう人なんだろう? ちなみに,地謡に萬斎登場。久しぶりに萬斎を生で観て,ちょっとすごいと思ったね。出てきただけで「あ,萬斎だ」と分かるもの。昔からだけど独特のスター性があるんだよなあ。もうどこぞのソウケとは全く(略) まだまだ40そこそこなので,できれば狂言に専念して欲しいところだ。「鞍馬天狗」に出るんだけど。

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2007.10.31

バレンボイム指揮ベルリン国立歌劇場「モーゼとアロン」(10月20日)

[][][] バレンボイム&ベルリン国立歌劇場の千秋楽は,シェーンベルクの「モーゼとアロン」。未完でかつテーマや音楽が難しいので殆ど上映されないことで有名です。ですが,これが一番面白かったです。最初から「構えても分からないから気楽に観よう」と思ったのが良かったのか,それとも演出の現代性のせいか。

 まず,老若男女全員,「マトリックス」風の服装(カツラ・サングラス・黒スーツ)をしているというのが目を引きます。遠くから観ると誰が誰だか分からない。主役のモーゼとアロンでさえ,「こういう風に歌ってるから」以外に群衆と見分けはつかない。匿名の社会という暗喩か。テレビだかモニタを大量に舞台に置くということもしてたから,エジプトの民が「メディアの中で誰か神のように自分を導いてくれることを欲している人達」のように見える。そして,アロンが「ことばを持つ者(だが真理は持ってないかもしれないし求めようとしていないかもしれない者)」,モーゼが「真理を求めているが,民に伝えることばは持たない者」で,当時も現代も,前者の方が圧倒的に強い。最後にモーゼは上着を脱いで現れるのだが,「匿名性を脱した」段階ではあるが,既に民衆に言葉は伝わらず,言葉を勝手に伝えたアロンに対しても「その石版だって偶像だろ」と言われてしまう。音楽も,独白のようなモーゼのパートと「歌」となっているアロンのパートの対比が面白かった。
 
 さて,このような演出なので,ブー出てましたね。ブーはいいんだけど,もうちょっと堂々と自信持ってやれよとちと思った。カコワルイ。千秋楽なので,カーテンコールの後は関係者一同舞台上で鏡割り(笑) バレンボイム,本当にお疲れさま。ありがとう!

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2007.10.23

バレンボイム指揮ベルリン国立歌劇場「トリスタンとイゾルデ」(10月8日)

[][][] 全公演が終了し,ネタバレの心配がなくなったので,ここで感想を上げときます。この「トリスタンとイゾルデ」は全部で4公演あったのですが,その初日である神奈川県民ホールでの公演を観に行きました。


 感想ですが……,本当はあまり悪いことは書きたくないのです。贅沢を望んだらキリがないし,今は聴くことが出来ない歌手と比べるのは限りなく不毛だと思うので。歌舞伎に喩えると,「歌右衛門の政岡が最高で,それ以外はない」と言ったところで,もうその舞台に触れることは出来ないわけだから,どうしようもないし,「だからなんだって言うんだよ」としか言いようがない。
 なんですが……,あのトリスタンはないだろう。2001年にバイエルン・コンヴィチュニー演出のを観に行った時,演出の意味が分からなかったせいか,つまんねえ話だなという感想しか抱けなかったので(ひどいな),相性が悪いのかもしれないですが,それにしてもあのトリスタンはなあ。現時点であれ以上を望むのは無理なんだろうか。初日だったせいなのか,声が出てなかった。オケに対して明らかに負けている。声だけで精いっぱいだから歌にニュアンスをつけるなんて無理で。オケの音量が大きすぎるのかとも思ったのですが,イゾルデ役のマイヤーは全くそんなことはなかったので,力量なのでしょう。マイヤーはメゾソプラノというせいもあって,少し大人なイゾルデ。第1幕におけるイゾルデの複雑な感情が細やかに表現されてました。最後の「愛の死」は本当に見事です。
 そして,マルケ王のルネ・パペも良かった。ただ,この人少し見た目が若いせいもあって,「マルケ王でいいのではないか>イゾルデ」と思ったのは私だけだろうか。渋くてカッコいいんだよな。
 あとクプファーの演出ですが,意外と正統派だけど意味深。あの羽が生えた人物の像だけど,うずくまる堕天使にも見えるし,キメラのような怪物にも見える。きっといろんな意味に見えるように作られているのだろうが,トリスタンとイゾルデの姿にもそれを見る私達の姿にもなるのだろう。

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2007.10.06

バレンボイム指揮ベルリン国立歌劇場「ドン・ジョバンニ」(9月30日)

[][][] 今年の秋はベルリンとドレスデンが相次いで来日し,ドイツオペラファンは散財気味ではないかと思う今日この頃ですが,皆様いかがお過ごしでしょうか? それはともかく,バレンボイム指揮・ベルリン国立歌劇場の「ドン・ジョバンニ」(東京文化会館)を観てきました。このコンビによる2002年の「指輪」は残念ながら観に行けず非常に残念な思いをしました。
 まず,今回の舞台ですが,気になったのが,演出がトーマス・ラングホフだったこと。この人の演出によるバイエルン国立歌劇場の「マイスタージンガー」2005年に観にいきましたが,現代的でシニカルな演出だったのが印象に残っています。シニカルというか後味が悪いというか。そして,今回も実にそんな感じでした。
 確かにドン・ジョバンニは,本当にあらゆる女を誘惑し続け,そのために従者のレポレロをひどい目に遭わせ続け,人殺しをしても「別にばれなきゃいい」くらいにしか思わない悪人ではあります。でも,「本当の極悪人」かというとそういう風にも見えない。歌手の性質もあるのかもしれないけど,モーツァルトの時代と違って現代では,この手の悪人が「極悪人」とまで見えなくなってしまっているのかもしれない。単なる「反省のない悪人」。まあ,1000人切りくらいで喜んでいる人間だから。
 そして,誘惑される女やレポレロが善人かというとそういう風にも見えない。女ってずるいよね。誘惑されそうになっても恋人や自分にいろいろ言い訳して,涙まで流して,自分は純潔なんだと信じ込む,そういう偽善者。レポレロだって,ひどい目に遭いながらも多分うまい汁は吸ってきたんだろう。そういう人達が,ドン・ジョバンニが地獄に堕ちた後に「悪はいつかは滅びるのだ」と歌うわけですよ。世の中ってそういうもんなんだけど。「ドン・ジョバンニ」を生で観るのは初めてなので原作でもそうなのか,演出のせいで余計そう見えるのかは判別出来ないのですが。


 さて,歌手の方ですが,レポレロのハンノ・ミューラー・ブラッハマンが良かったです。しょうもない小悪党のようで。あと,エルヴィーラのアンネッテ・ダッシュが意外と落ち着いた感じで舞台を引き締めていたように思います。ドンナ・アンナのアンナ・サムイルの声が少しきつかったのでコントラストがついて良かったかなと。
 バレンボイムの指揮ですが,序曲は何とも言えない不安定さがあったのですが(わざとなのかは分からず),舞台が進むにつれ生き生きとした音になっていきました。さすが。

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2007.09.18

市馬・喬太郎「ふたりのビックショー」(9月7日)

[ ][] 練馬文化センターで行われた「ふたりのビックショー」。見所は何と言っても「馬夫・豚夫の歌謡漫談」(笑)
 7時開演だが,6時45分ごろから前座の市朗さんが出てきた。私はこの日,ギリギリについたので時間を間違えたかと思ってあせった。7時からは寒空はだか。相変わらず客が反応しにくい芸である。「東京タワーの歌」はお約束だが。上手かったのは,坂本九の歌真似といとし・こいしのパロディ。ネタがやばすぎてどこにも書けない。
 その後は,市馬の「お化け長屋」。マクラに先代の正蔵師匠の話をしていたが,「怪談」つながりで。途中で歌まで歌い始める大サービスがあったが(笑),市馬師匠はここに来ていっそう充実してきたなあと思いました。
 中入り後はお待ちかねの歌謡漫談。結構グダグダだった(笑)が,市馬……じゃなかった馬夫の素晴らしい歌が聴けたので良し。そして,馬夫は意外と毒吐きなのね。木久蔵親子のこととか。まあ落語できな(略) 自分の出番が終ってしまった馬夫はともかく,トリを務める喬太郎……じゃなかった豚夫はちょっと固かったか。
 ゲストは桃太郎師匠。「前の漫才が押して時間がねえ」とボヤキながらだが,あのくらいの時間で私にはちょうどいい……。柳昇師匠の話ばっかりしてたが,ちょっと面白かった。
 最後は喬太郎の「彫師マリリン」。「寿司屋水滸伝」的なバカバカしい話。しかし,喬太郎師はバカバカしい話に限って無駄に演じ分けが難しかったりするんだよな。最後,幕が下りなくてあせっていたのが可愛かった。終ったのは9時半過ぎ! 福袋みたいな会だった。

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2007.09.17

桂米朝落語会(8月31日)

[][][] 京都府立文化芸術会館で行なわれた落語会。たまたまその日関西にいたので行ってみた。もう米朝もかなりの高齢なので,今見ておかないといつ見られるか分からないし。会場に行ったら平均年齢がものすごく高いので軽く凹む。

 最初は雀太。ここで,関西の落語には「前座」,「二つ目」,「真打」といった制度がないことを初めて知った。それはともかく,関西では少しずつ人気が出始めている人らしい。演目は……何だったっけ? 街道ものだったけど。
 お次は吉坊。年齢不詳。26歳らしいが,外見はそれより若く見えるし,噺はそれより年上に見える。若くして亡くなった吉朝の弟子。「おごろもち盗人」だが,愛嬌があっていいと思った。
 団朝の「幸助餅」。この日,一番見て良かった。この人は今後チェックしよう。安定感があるし,こういうベタな人情噺を嫌な感じを与えずに話せるのはすごい。
 そして中入り前最後は米朝の「よもやま噺」。ここでとても残念なことが起こった。後ろの立ち見席で,デジカメで写真を撮っている人がいた。大体においてこんなところで写真を撮るのは非常識である。それを注意する人と撮っていた人が少しもめていた。休憩時に会館の人も交えて話し合いが行なわれていたが,どうも写真を撮っていた人は取材の人でちゃんと許可は取っていたらしい。しかし,取材なら腕章をつけるなりすればいいし,大体立ち見の客に交じってデジカメで写真撮るような取材ってあるのだろうか。そして,取材の人も「私そんなに悪いことした?」みたいな顔してたんだけど。
 このエントリを書くに当たってgoogleで検索してみたら,京都民放webがお詫びの文書を出していた。この人たちだったらしい。
桂米朝落語会(8月31日)での写真撮影でご迷惑をおかけしました

去る8月31日、京都府立文化芸術会館で行われた「桂米朝落語会」で、客席フロアで取材していた本紙記者の写真撮影の音で、観客の皆様の鑑賞を妨げてしまいました。この写真撮影は、取材許可の内容を逸脱したものでした。

 観客の皆様、主催者の桂米朝事務所、京都音協ならびに関係者の皆様におわびいたします。


2007年9月7日

京都民報社

 会から1週間も経ってるな。抗議でも受けた? 今後は気をつけて下され。
 肝心の米朝の噺自体は……まあ小咄ですわ。もう年齢も年齢だから長いものや本格的なものはできないのかもしれない。残念。

 中入り後はすずめの「禍は下」。すずめって三林京子さんなんですね。それも初めて知った。踊りも軽く披露して,トリの小米朝へつなぐ。小米朝だが,この人相変わらず落ち着きがない(笑) 三木助と微妙に被る。顔も声も結構父親に似ているんだけど,父親も結構そそっかしいらしい。噺は「くしゃみ講釈」。それはともかくも,こんなにうまいと思わなかった。「覗きからくり」の真似は実はよく分からなかったんだけど(実物を見たことがないから)講釈師の語りは良かったな。あと,主役がそそっかしい人間であるのも彼のキャラに合っていたのかも。上方落語もいいな。

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2007.08.28

「怪談」〜納涼ほらー演芸会〜(国立演芸場)

[][ ][][]
 毎年恒例の「納涼ほらー演芸会」。人間国宝の一龍斎貞水が立体怪談をすることで有名。実は立体怪談は文京シビックセンターでも行われる(貞水先生が生まれも育ちも文京区だかららしい)のだが,今年は喬太郎師も出演なので,国立にしてみた。今年のプログラムは次の通り。

一龍斎貞友「真景累ヶ淵「豊志賀の死」」
ケン正木<ホラーマジック>
柳家喬太郎「路地裏の伝説」
仲入り
一龍斎貞水「鏡ヶ池操松影「江島屋怪談」」

 前座は……誰だっけ? こういう会での前座はやりにくいよなあ。最初は一龍斎貞友。貞水のお弟子さんで,声優としても有名らしい。……あれ,どこかで聞いたことある声だなと思って後で調べたら,「ちびまる子ちゃん」のお母さんの人だった。というか,鈴木みえだったとは……,松山光だったとは……。道理で声の使い分けがうまいわけだよ。今年映画化されているからか,「豊志賀の死」。また,女性が語ると,ねっとりとしていて怖いですな。
 ケン正木のホラーマジックだが,ナポレオンズ的しょーもないネタあり,80年代的人体切断芸ありと,楽しかった。そういえば,最近人体切断マジックってやらないね。昔はテレビで結構やってたのに。
 柳家喬太郎師は,SWAのユニフォームを着て登場。どうして小学生や元小学生ってあんなに怪談が好きかねwww 口裂け女はポマードの匂いが嫌いだと小学生だった私は聞いたな(80年代の小学生の話)。でもって,元小学生男子のリアクションがうますぎ。オチは何となく読めたけど。

 大トリの貞水先生。50分もあるので,時々脱線話をしたりしながら客の集中力が大事なところで途切れないようにいろんな工夫をしている。フリートークはすごくうまいわけではないのだが,面白かったのは,「なぜ日本の怪談は怖いか」という話。日本の怪談には必ず因果があるから怖いのだ。西洋のホラー映画って,因果はないでしょ? たまたま幽霊屋敷に入っちゃった若い男女が,何も悪いことしてないのに襲われたりする。ある